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本田圭佑 9年前

伝わらない本田の真意。一石投じられたクラブ、メディア、ファン。意に反し進むミランの変革

text by 神尾光臣 photo by Getty Images

本田の発言に批判的なミラニスタ。一方では擁護の一派も?

 ただ批判のレベルはそこまで。翌日以降は、「次の試合で監督が勝たなければ危ない、トリノ戦ではフォーメーションが変更される」などといういつもの調子に戻った。「(マンチェスター)シティかパリ・サンジェルマンくらいお金を使うか、そうじゃなければやはりストラクチャー(構造)の部分から見直していくか」と本田は語っていたが、クラブの構造改革への議論は見事にスルーされていた。

 選手間の距離感が悪い。ファンやメディアは結果だけしか気にしないのですぐブーイングをし、つなぐプレーができない。そんなミランの戦術的な“病理”について「クラブやメディアが構造的な評価基準を変えれば再建へつながる。ヒントは今日のナポリ」という表現で本田は語っていたのだが、そこを丁寧に伝えたメディアは筆者の知るところで一社だけだ。むしろ本田がメガクラブの補強に言及したところだけが一人歩きし、「彼こそがクラブの現実をわきまえていない」と批判するところもあった。

 次にファン。「クラブに雇われている立場であの発言はダメだ」「自分が活躍していないのに何様のつもりだ」「給料を奪って10番の品位をおとしめやがって。さっさと出て行け」という反応が、掲示板でも街のミラニスタに聞いたところでも多かった。

 中には「前から感じていたというならシーズン前に言えばよかった。そうしたらあのカタツムリは夏に放出できたのに」と語っていたファンもいた。当然彼らは、「内容など見ず勝てば拍手する」という本田の批判に耳を貸してはいない。

 ただファンフォーラムを幾つか回ってみると、「本田は英雄だ」とする一派も実はある。「ベルルスコーニやガッリアーニのスパイとなって動き、記者会見でもクラブにおべっかしか使わない連中よりはるかに誠意がある」「得することは何もないのにあえて言った。このことだけでオレは本田のユニを着てスタジアムに行ってもいい」「あいつは日本でメディアインパクトの一番強い選手らしいから、これでオレらの抱える問題は全世界にさらされた」と、暴露を褒めていた。

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