自分の“ドーナツ”を知ることが重要
それでは、「どうしたらスムーズな動作ができるのか?」というと、先にも書きましたが、人間は歩くときに重心を行きたいところに持っていくと自然に足が前に出て進むことができるのですから、足が勝手にでてくる範囲で動くことができれば、意識することのない、スムーズな足の運びができるようになるわけです。
歩くときに小股だと足を意識して前に出さないと進むことができません。少しずつ歩幅を広げていくと、あるところから、すっと足が前にでてくるところがあります。さらに歩幅を広げて大股になると、ふたたび足を出さないと歩けなくなります。これを前後左右とあらゆる方向で試してみると、図2のようなドーナツができると思います。この自分のドーナツを知っておくことで、どの範囲にボールを置いておけば、足がスムーズに出て、ボールコントロールやパスを自然に行うことができるか分かるようになります。
自分のドーナツを知ることができたら、今度はボールに触れるときのポイントです。ボールに触れるときには、足(英語でフット:足首から下の部分)を動かすのではなく、全身で伸びるようにボールと足が出会うところにお腹を運ぶイメージを持つことが大切です。
お腹とは重心のことです。重心を移動させることを意識するために、ボールに触るときには、伸びるようにボールと足が出会うところにお腹を押し出すようなイメージをしましょう。足が先に出てしまうと、まだ重心が体の後ろ(立ち足)に残ったままになりますし、足先を前に出すと、バランスを保とうとして足の筋肉が硬直します。ボールは、硬いものにぶつかれば勢いが吸収されず大きく跳ね返りますので、コントロールミスへとつながるわけです。
このように、足を前に出して、重心が伴わない状態で移動するときには、自分の体重を立ち足で押しだしてあげないと体は移動しません。これを『体重移動』といいます。
一方、重心が先に移動してそれを足が拾うように移動するのを『重心移動』といいます。立ち足を踏み込まないでも次の足が勝手に前に出てくるので、パワーの必要な体重移動と比べると、疲れ方にも違いがでてきます。反復横とびが疲れるのは、進行方向と反対側の足で全体重を押さなければならない体重移動だからです。
重心移動ができれば、体力的にきつくなる夏場でも少しのエネルギーでプレーすることができるのです。
【了】
プロフィール
鬼木祐輔(おにき・ゆうすけ)
1983年神奈川県横浜市出身。日本初の「フットボールスタイリスト」。頑張らない、力まない…しなやかに怪我なくサッカーに取り組めるように「ボールに対して自分の身体を扱うこと」にこだわりながら、選手たちの『ノリシロ』を拡げるためのキッカケ作りをしている。