本当の意味で試合の厳しさが学べるのは公式戦のみ
ゼルビアの執念に屈した90分間を、視察した日本サッカー協会の霜田正浩技術委員長の総括からも、現状に対する「もどかしさ」が伝わってくる。
「これが公式戦の厳しさ。その意味では、公式戦に出なきゃダメということです」
プロ野球の二軍戦に当たるサテライトリーグが廃止されたのが2009年シーズン。各チームは近隣のJクラブや大学生チームと公式戦翌日に練習試合を組み、出場機会を得られない若手をプレーさせている。
しかし、本当の意味での厳しさ、タフネスさ、目の前のワンプレーにかける執念といったものは、公式戦でなければ身につかない。Jリーグ・U-22選抜への派遣や期限付き移籍などを活用しても、悲しいかな、描いていた青写真と現状が大きく乖離している。
3枠しかないリオデジャネイロ五輪出場をかけて来年1月にカタールで開催されるAFC・U‐23アジア選手権の組み合わせ抽選会が行われたのが9月12日。グループリーグで北朝鮮、タイ、サウジアラビアと同じB組に入り、ターゲットが明確になってから初めて迎えた実戦がゼルビア戦だった。
しかしながら、幾度となく伝わってきた“フワッとした雰囲気”からは、貴重な機会という意識が選手たちの中に足りなかったのではと思えてくる。霜田技術委員長が続ける。
「それ(貴重な機会)は選手たちがちゃんと意識してくれないと困る。今日はユニフォームこそ違いましたけど、一枚脱げばその下には日の丸を背負っているんだぞ、という話は僕からもしました。町田は勝ち点3を取りたいという気持ちが本当に強くて、デュエル(1対1の攻防)があった。
公式戦に向かう準備で、ウチがどれくらい相手を上回っていたのか。公式戦になればJ1もJ2もJ3も、試合が始まれば関係ない。目の前の相手と戦うだけだという点をもう一度、この年代の選手たちがちゃんと意識してくれれば(負けは)無駄にならないと思います」