岡崎が認識した「立ち位置」
「自分がここ最近エネルギッシュなプレーがなかなかできていなかったですけど、今日は(エネルギッシュに)よくできていたんじゃないかと思う」とは本人の分析だが、背番号20の動きの良さは容易に見て取れた。
例えば36分、左サイドでボールを受けて味方とつないでエリア内に進入した場面。この際メルテザッカーは両手で岡崎を強引に止めて、アーセナルはなんとか事なきを得ている。これ以外にも、CBコンビのメルテザッカーとコシエルニーの2人が一瞬のスピードで敵を抜き去ることのできるバーディーと狡猾にラインの裏を狙う岡崎を嫌がっていたのは明らかだった。
だが後半が開始してピッチに立ったイレブンに、岡崎の姿はなかった。あまりの驚きに言葉が出なかったが、クラウディオ・ラニエリ監督は、交代は戦術的な理由で「MFを一枚増やして中盤のスペースを埋めようとした」と説明した。
しかし、この作戦は完全に裏目に出てしまう。岡崎がいなくなったチームからはインテンシティーが消え、結果的に後半は一方的な試合展開となり、最終的にチームは2-5と大敗する。
無論、これはあくまで結果論だ。格上のチームを相手にしていただけに、指揮官が試合を落ち着かせようとしたのは理解できる。だがそれでも、あの状況での交代は不可解なものであった。
しかし、岡崎本人はまるで苛立ちを表に出さなかった。前述のとおり、あくまでこれが自分の「立ち位置」であり、自身が信頼を勝ち得ていないことを認識し、そして最終的に「結果を残せば、自分がチャンスをつかめると思う」と前を向くばかりである。
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