「ダルムシュタットは尋常じゃない幸運を手にした」
場内では両チームのボール支配率が発表される。ドルトムント:ダルムシュタット=71%:29%。ダルムシュタットはBVBに飲み込まれようとしていた。
71分。ハイ・テンポで目の前をパスが行き交う。最後はヤヌザイのラストパスに、オーバメヤンが抜け出して、加速した。2-1。圧倒的なポゼッションを考えれば、このまま試合が終わってもおかしくはなかった。
しかし、90分――。
センターサークル付近からのFK、ゴール前にボールを送る。ローゼンタルがヘッドでエリア内に落とす。ユングヴィアスがボレーで打とうとする。空振り。ギンターと接触する。ボールがこぼれる。絶妙の位置、バウンドの高さだった。ダルムシュタットの主将スルは、すかさず蹴り込んだ。2-2。
昇格したばかりの挑戦者を、香川は「ハードワークしていた、最後まで諦めなかった」と評した。ニーマイヤーは「クオリティ以上のメンタリティを」というモットーで戦ったと明かす。
シュスターは「幸運にも、我々は終了前に同点弾の権利を掴んだ」と振り返った。フンメルスは「今夜ダルムシュタットは尋常じゃない幸運を手にした」と言う。
圧倒的な劣勢を覚悟しながら、どこまでもハードワークを惜しまない姿勢に、揺さぶられたのだろうか。
ボールは最後の最後に、絶妙の場所に落とされた。
ブンデスリーガの第7節で、フットボールの女神が微笑んだのは、ドルトムントではなく、ダルムシュタットだった。
【了】