レジェンド、キャティサック監督の就任が転機に
1990年代のタイ代表は、国内で「ドリームチーム」と呼ばれ期待されていた。ともにタイ代表の歴代最多記録である131キャップ70得点を誇るレジェンドのキャティサック・セーナームアン、中盤で高い技術を発揮したスラチャイ・チャトゥラパッタラポンといったタレントを擁して、一つの黄金期が築かれた。
だが、彼らの世代が代表を退くと、次第に低迷期に突入。ただ蹴るだけの退屈なサッカーで結果も残せず、ファンの関心は薄れていった。加えて、「タイ代表はボクシングをしに行く」などと揶揄されたほど、非紳士的な行為が目に付いたことも「代表離れ」を加速させた。
アジアカップの戦績を見ても、1992年から2007年までは5大会連続で本戦出場を果たしているものの、ここ2大会は連続で予選敗退。成長著しいタイプレミアリーグの盛り上がりとは裏腹に、近年はファンの興味が「チャーン・スック(戦象)」の愛称を持つ代表チームに強く注がれることはなかった。
ところが昨年、90年代の「ドリームチーム」の顔だったキャティサックが代表監督に就任すると、状況は一気に好転。仁川アジア大会でベスト4の結果を残すと、AFFスズキカップでも6大会ぶりに東南アジア王者を奪還した。国内での代表チームへの関心は完全に回復し、「ドリームチーム2」とまで呼ばれるようになった。
今年に入っても、U-23タイが東南アジア競技大会を難なく制覇。グループリーグから7戦全勝、24得点1失点という圧巻の内容だった。終始、圧倒的なポゼッションから繰り返された攻撃は、東南アジアの域を越えようとしているように見えた。
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