試合を重ねることで懸念される課題とは
トゥヘルが敬愛するペップ・バルサが、高い位置に上がった右SBダニ・アウヴェスにサイドチェンジからピタリとボールを入れるように、香川は何度もギンターにパスを送る。引いて中を固められた時に、香川によれば「ボールと逆サイドの選手の動き出しがすごく大事」なのだという。自信がまた、戦術に厚みをもたせている。
そして新戦力の存在である。ペップ・バルサをロールモデルとするトゥヘルは、長身痩躯の19歳の選手を発掘して、いわゆるピボーテに据えた。ユリアン・バイグルの風貌は、かつてFCバルセロナを率いたヨハン・クライフがリーガエスパニョーラにデビューさせた、19歳のペップ・グアルディオラを彷彿とさせる。トゥヘルが、バイグルに在りし日のペップそのものを見たとしても不思議ではない。
そしてバイグルは、今季のドルトムントに「リズム」を産む欠かせない存在となっている。的確なポジショニングで、正確無比にパスを散らす。確かな技術に裏打ちされたシンプルなプレー。才能は、巨大で底が知れない。9月7日付の『キッカー』誌は「ボルシアのエレガントなパスの王様」と評する。
「リズム」×「自信」×「新戦力」――。概ねこの図式が、これまでのBVBの快進撃を支えてきたと言えるだろう。そこで今問題なのは、疲労が蓄積する中でローテーションを採用し、若干の先発の入れ替えがあると、この図式が崩れてしまうことだ。
カウンターに苦しんだ17日のELクラスノダール戦、そして23日のホッフェンハイム戦は最たる例と言えるだろう。特に中盤の香川、ギュンドアン、バイグルはこの図式を支える重要な3人と言える。
つまり、ローテーションを採用したとしても、この図式を維持できるかが、再び走り出すドルトムントの課題と言えそうだ。
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