ミランで居場所を失う危険性も
スピードのある相手は走る前に潰し、パスワークはその出所にプレスをかけて周囲のスペースを瞬時に消す。こだわりすぎる面はあるが、攻撃は戦術で緻密に潰すのがイタリアの特色だ。いくら組織の質を高めたとしても、閉塞する場面は出てくる。そこを本能的なプレーでねじ伏せるのがタレント性というものなのだろう。
そして本田に関して言えば、本能で状況を打開する以前にプレーの選択肢を消された時の姿勢が淡泊だった。エリア手前でシュートが狙えなければ、仕掛けるよりもバックパスになる。またサイドのスペースに流れた時も、フェイントを仕掛けて中へ侵入せず、またマークを外してクロスを入れることにも失敗した。
エンポリ戦後半のボナベントゥーラには、少なくとも仕掛けるという姿勢はあった。「ここまでトップ下では一番彼が良かった」というミハイロビッチ監督の評価に繋がっているのだろう。無茶を振っているようだが、連携が整わない時も局面を打開できるプレーが必要だ。
「ミランはこの3年間、ミランらしいことをしてこなかった」と指揮官は語ったが、それは難しいプレーにチャレンジする技量と勇気の欠如を意味する。
本田自身もその点をブレークできなければ、新しいミランで居場所を失うということになる。
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