審判のミスの要因はポジショニングの悪さにある
今季は例年以上に審判問題が物議を醸している。「(1stステージの)開幕節での誤審が大きなインパクトを与えた」(日本サッカー協会審判委員長・上川徹氏)ことが要因として挙げられる。また、メディアが生み出してしまった虚像の独り歩き、つまり「誤審」として扱われてしまった判定もある。フットボール批評では、心象ではなく、Laws of the game(ルール)を元に、今季の問題視された判定を振り返り、審判問題について考察していく。
J1・1st 第1節 清水エスパルス×鹿島アントラーズ
清水エスパルスが1-0でリードした状況で迎えた69分。鹿島アントラーズの遠藤康が同点ゴールを決めたが、ゴールラインを完全に割っておらず、ノーゴールと判定すべきだった。
さらに82分には、1点を追う鹿島アントラーズの金崎夢生のシュートを、犬飼智也がバレーボールの回転レシーブのようなハンドでブロック。PKかと思われたが、佐藤隆治主審は、ノーファウルとジャッジした。
上川氏は、ハンドについて「誤審だった」と認めている。誤審が起きた原因は、「シュートの瞬間だけを見るならば、ポジショニングは悪くない。が、この後に起こることを考えると、ワンテンポ変えたタイミングで、グッと中央に入っていかなければいけない」と分析する。また、JFAトップアシスタントレフェリーインストラクターの廣嶋禎数氏は「副審の角度からも、真横過ぎて、肩なのか、腕なのか見えなかった」と弁明した。(中略)
J1・1st 第3節 ヴィッセル神戸×FC東京
FC東京リードで迎えた40分。ヴィッセル神戸の安田理大のアーリークロスを、渡辺千真がトラップし、ペナルティエリアに進入。GK権田修一を交わしたところで倒れると、吉田寿光主審はPKと判定。確かに、権田の手がかかったように見えたが、スローで見ると手はまったくかかっておらず、渡邊のシミュレーションだった。
上川氏は誤審だったことを認め、「主審のポジションに問題があった。ステップを止めることなく、パスが出た瞬間に寄っていって、PAの外側から監視できていれば、しっかりと見極められた」と指導したという。
このように、1stステージの第3節までに多くの誤審があった。ミスが生じた原因は、ポジショニングの悪さ。そして、それは今季の他の誤審にも当てはまる。特に、吉田主審や西村雄一主審など経験のある審判員にも、ポジショニングのミスが見られたことは問題である。経験のある審判員が、ポジショニングのミスをするというのは、“気の緩み”と捉えることも出来る。人間がミスをするのは当然でもあるが、減らすことは出来る。メディアが審判員のポジショニングを監視し、常に緊張感を持たせることで、改善される判定もあるのではないだろうか。
とは言え、批判のための批判では意味がない。日本のメディアの審判批判の中には、無知や無理解が生み出すものも多い。その最たる例が、第12節ガンバ大阪×川崎フロンターレ戦後に巻き起こった審判批判である。(全文は『フットボール批評07』をご覧ください)