山口が語った『状況判断』
しかし、テヘランで行われたアフガニスタン戦は芝の様態が悪く、高地のため選手の無闇なアップダウンが息切れにつながるリスクもあり、カンボジア戦の戦い方の精度をそのまま上げるだけでなく、ディテールの部分を変化させる必要があった。
「細かいプレーというよりはダイナミックなプレーを意識しました」と香川真司が語ったプレーは斜めのサイドチェンジや前を向いてボールをもったらドリブルを仕掛ける姿勢に表れていた。
特に左サイドで先発起用された原口元気は幅広い位置からのドリブルやダイナミックなランニングで目立っていたが、指揮官の狙いと要求にしっかり応えるプレーだったと言える。
そうした戦い方は試合前からチームで共有していたものだが、試合の中で選手が判断し、有利な試合展開につなげたと見られるポイントが少なくとも2つあった。1つはボランチではなくセンターバックをビルドアップの中心にすること。前者に関してボランチの山口蛍はこう説明する。
「相手(2トップ)が俺とハセさん(長谷部誠)にほぼマンツーマンで付いてきたので、そこはちょっとハセさんとも話しながら、あんまり引くよりちょっと前に行って、センターバックがフリーでボールを捌けるから、俺らが行っても人数増えるだけやからっていう話をしながらポジション取りをしていた」
つまり相手の2トップがボランチの2人をマークするため、その後ろでセンターバックの吉田麻也と森重真人はフリーにボールを持てる。ならば、そこに長谷部や山口が吸収されてつなぎに参加するよりも、ビルドアップは任せて中盤の前目に顔を出す形を取った方が、効率よくチャンスに絡んでいけるということだ。
そのポジショニングは彼らの攻撃参加を増やすだけでなく、香川が常にボランチのサポートを受けながら前向きに仕事できる状況も生んだ。