この夏の“敗者”は…?
「ペトル・チェフのみ」と非難されているアーセナルに関しても、補強失敗の烙印を押すのは早すぎる。フロントが「大型予算」を公言していただけに、実質的な補強がGKだけに終わった事実は淋しいが、長年の問題だった自軍ゴール前の穴がついに埋まった事実は大きい。
新守護神を迎えた6月の時点では、優勝争いへの本格参戦を予想する声も上がった戦力を持つだけに、既存のフィールド選手たちが力を発揮すれば、チームを信じるベンゲルの勇断として讃えられ得る買い控えだ。
敗者と呼ぶべきは、最重要課題のCF補強に失敗したトッテナムだろう。後方のリスクを承知でハイラインを基本に攻めるスタイルを貫くマウリシオ・ポチェッティーノ監督は、攻撃のフィニッシュ役となるハリー・ケインへの過度の依存を昨季中から心配していた。プレッシャーの重さか、22歳でレギュラー2年目の若きエースは今季開幕4戦で無得点。チームにも白星がない。
改善策はウェストブロミッチで速さと勝負強さを備えたセカンドトップへと成長したサイド・ベラヒノ獲得のはずだった。当人も移籍を志願してトッテナム入りを待っていた。
にもかかわらずの交渉不成立。ダニエル・レビー会長はタフな交渉戦術で知られるが、土壇場4度目の最終オファーでさえ、2500万ポンド(約46億円)という先方の値踏みに対して、前金はその4分の1以下で残金は出来高制も取り入れての分割払いという条件を提示したという情報が真実であれば、強気どころか見当違いもはなはだしい「戦術ミス」だ。
しかも、2年連続となるエマニュエル・アデバヨール売却失敗のおまけ付き。昨季から戦力外のベテランCFは、翌々日発表のプレミア登録選手リストにも含まれていない。
ケインの負荷軽減は獲得候補としては3番手だった前リヨンのクリントン・エンジに望みを託す状態だ。トッテナムにとっては、早くも目指すトップ4戦線からの後退を告げるかのような市場閉幕となった。
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