選手以上にナーバスになっていた指揮官
試合中には中盤の選手たちが自発的に話し合い、山口をアンカー的に、長谷部を前にする布陣にトライしている。選手たちがリスクを冒そうとしている以上は、指揮官も同じ姿勢を貫くべきだろう。
アルジェリア代表を率いた昨夏のワールドカップ・ブラジル大会。対戦相手や試合状況に応じてさまざまなシステムを駆使したハリルホジッチ監督の変幻自在なさい配に、同じブラジルの地で引き出しの少なさを露呈し、一敗地にまみれた日本を変えてくれるという期待を託した。
チュニジア、ウズベキスタン両代表と対峙する初陣へ向けた代表メンバーを発表した席では、こんな言葉も残している。
「中盤では異なる2つのオーガナイズを準備してきたい」
しかし、8試合を終えた現在、中盤の3人はダブルボランチとトップ下で固定されている。カンボジアに対するスカウティングも、当然行われていた。相手の実力を把握した上で、それでもホームでの試合でダブルボランチを組んだ采配からは、可能な限りリスクをゼロに抑えたかった指揮官の本音が透けてくる。
試合後の公式会見で、指揮官はこうも語っている。
「この夏はシンガポール戦のドローをずっと引きずっていた」
選手たちの思いを代弁した形だが、誰よりもハリルホジッチ監督本人が、ホームでまさかのスコアレスドローに終わった6月のシンガポール戦に対してナーバスになっていたのではないだろうか。
胸中に芽生えた焦燥感は、国内組だけで臨んで最下位に終わった8月の東アジアカップでさらに増幅される。明らかに精彩を欠いていた岡崎をはじめとする海外組を、帰国から中2日ないし中1日でカンボジア戦に起用したのも、結果を出せていないことに対する焦りを物語っている。