存在感ゼロに等しかった長谷部
結論から先に言えば、豊富な運動量でボールに絡み続けられる山口をアンカーに据えれば十分だった。実際、シンガポール代表に4対0で敗れているカンボジアに対して、いつものように「4‐2‐3‐1」で臨む必要性はあったのだろうか。
山口とコンビを組んだのは、キャプテンを務める長谷部誠(フランクフルト)。しかし、厳しい言い方になるが、特に前半に関しては存在感がゼロに等しかった。
ボールを受けても、近くにいるフリーの選手に預けるだけのプレーがほとんどを占めた。これでは攻撃に緩急のリズムを生み出せない。何よりもハリルホジッチ監督から最大のテーマとして課された、積極的にミドルシュートを狙う意識も低かった。
必然的に、カンボジアが作るブロックの周りでパスを回す時間帯が多くなる。相手の想定を超える攻撃を仕掛けられない以上は、本田の言う「決定的にフリーになれるシーン」は作り出せない。
結果論になってしまうが、長谷部ではなく柴崎岳(鹿島アントラーズ)を起用。香川とインサイドハーフを組ませたら、カンボジアに違った脅威を与えられたのではないか。
柴崎はミドルシュートを得意としているし、視野の広さと長短の正確なパスで攻撃も組み立てられる。精神的な支柱として長谷部が欠かせないという理由ならば、日本代表の世代交代も進まない。
「FK、PKからのゴールが取れないことに関しては、このチームは世界一だ」
ハリルホジッチ監督は試合後、攻撃に欠けていた部分を自虐的に総括した。確かに、PKに関してはペナルティーエリア内で相手選手を慌てさせる場面すらなかった。
指揮官はカンボジア戦前に、PK奪取の「演技指導」までしている。ならば、なおさら中盤の陣形と選手を変えて、真ん中を固める相手に自分たちから突っかけさせる意識をもたせるべきだった。