3得点もカンボジアの守備を完全には崩せず
本田が指摘した決定的な場面とは、前半42分のことだ。
ペナルティーエリアの左角あたりでボールを受けたFW岡崎慎司(レスター)がタメを作る間に、FW武藤嘉紀(マインツ)が岡崎の外側を追い抜き、パスを受けてからグラウンダーのクロスを送る。
カンボジア選手たちは、完全にボールウォッチャーとなっている。当然ながら、ファーサイドからスルスルとゴール正面へ入ってきたMF香川真司(ボルシア・ドルトムント)がフリーになる。
すでに何度も報じられてきたシーンなので、その後の結果はあらためて説明するまでもないだろう。このシーン以外で決定的にフリーとなったのは、MF山口蛍(セレッソ大阪)とのワンツーでペナルティーエリア内に侵入した香川が、右足から強烈な一撃を放った前半41分くらいだっただろうか。
そのシュートもキーパーの真正面に飛んだ意味では「決定力不足」となるが、それ以上に深刻なのは、カンボジアの守備を完全に崩せなかった「決定機不足」となる。
本田のゴールは、相手キーパーの拙守に救われた感が否めない。岡崎のシュートが相手ディフェンダーに当たり、その後もピンボールのように日本とカンボジアの選手の間で弾んだ挙げ句、目の前に転がってきたボールを右足で叩き込んだ後半16分の香川の3点目も偶然の産物だった。
理にかなったゴールは、後半5分にDF吉田麻也(サウサンプトン)が決めたミドルシュート。右から左へ相手守備陣を動かし、幅を広げたところへタイミングよく攻め上がって右足を振り抜いた。
高校生のとき以来というミドルシュートを決めたと照れ笑いした吉田は、本来の仕事である守備についてこう語っている。
「中盤がちょっと行き詰まっている状態のときに、瞬間的に後ろが同数になりましたけど、大丈夫だと思いました」
90分間を通して、カンボジアの攻撃にいっさいの脅威を感じなかったというわけだ。決してカンボジアを見下すわけではないが、両国の力関係を考えれば偽らざる本音と言っていい。
強さと経験を兼ね備え、高さもある吉田と森重真人(FC東京)がセンターバックを組めば、その前方にポジションを取るボランチは2人も必要なかったのではないか。