途中出場もアイデアにかけていた宇佐美
武藤はマインツで初先発したボルシア・メンヒェングラッドバッハ戦でも、タテへ直線的に急ぎすぎるあまり、オフサイドを5回も取られ、カウンターのチャンスでラストパスをもらえないというミスを犯した。
もちろんドイツ移籍直後の初先発の試合でそこまで完璧なパフォーマンスができるわけはないが、彼はその失敗を自分なりに学習したのだろう。だからこそ、わずか1週間で直線的な飛び出しを改め、ウエーブを交えながら相手の視野から外れて前線に抜け出す形からゴールを奪えたのだ。
カンボジア戦でもそれと同じような相手をかく乱するような動きを織り交ぜつつ、緩急をつけながらタイミングをずらしていかないと、あれだけゴール前をガッチリ固めた相手には厳しい。武藤は今回の悔しい経験を8日の次戦・アフガニスタン戦(テヘラン)に生かさなけれなならないはずだ。
武藤と同じ92年生まれのプラチナ世代の宇佐美貴史(G大阪)も、ジョーカー的に使われながらチームの攻撃リズムを変えられなかった。6月のシンガポール戦(埼玉)のように中へ中へ入っていく傾向が強く、どうしても仕掛けが単調になりがちだった。
それを本人も自覚している様子で、カンボジア戦の試合後には「1対1のシーンを少しでも抜かせられれば入ったとは思いますし、そういうところのちょっとした余裕なりアイデアが欠けているように思う」と反省の弁を口にしていた。
天性のリズムと得点感覚を誇る彼なら、もっと相手を見ながら裏を突いたり、ドリブルできりきり舞いしたりしながら、ゆとりを持ってゴールを狙っていけるはず。そういう精神的余裕がないのは武藤と一緒。
若さと代表経験のなさがそういうふうに仕向けてしまうのだろうが、そこを改善しなければ、岡崎のような日本代表の確固たる点取り屋にはなれない。彼もまたカンボジア戦を教訓にしなければならないはずだ。