指揮官のメッセージにとらわれすぎる選手たち
そうした現象を引き起こした1つはシンガポール側の日本に対するスカウティングと対策であることは間違いないが、日本はそこにまともに付き合ってしまっている。
攻守の切り替えを早くし、ディフェンスの裏を狙うというのはハリルホジッチ監督が就任から強く発信してきたメッセージだが、試合の中で判断するべき選手がそこにとらわれすぎているのか、必要なところでの判断が失われてしまっているのではないか。
シンガポール戦のあとに筆者はハリルホジッチという指揮官が本来は実戦タイプであり、本番に向けては必要に応じたポゼッションなども取り入れていく可能性が高いことは指摘した。
このシンガポール戦を見ても、もう少しポゼッションで相手の守備を引き出し、そこから縦にペースアップする様な駆け引きをしていれば相手の守備を動かしながらギャップを作り出せたかもしれない。
だが、シンガポール戦に関してはもっと簡単なところに回答があった。簡単と言っても理論の話で、実際にプレーしている選手はまた違う次元にあるかもしれないが、冷静に試合を見返してみれば簡単に分かることではある。象徴的な事例をあげてみたい。
柴崎岳が右サイドに大きく展開し、本田圭佑が受けて前を向いたシーンにおいて、すぐ内側を岡崎慎司が、さらに内側を香川真司がダッシュした。この3人が同時的に縦を狙うことで、シンガポールも下がりながらの対応になると、ディフェンスと中盤の間が開いた。そこを突こうと動き出していたのが宇佐美貴史だ。
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