真のエースナンバー10となれるか
ハリルホジッチ監督も「彼に要求したいのは決断を持ってやってほしいということ。香川は決定的な仕事ができるし、キーとなって最後の場面を作ってほしい。我々がスピードアップできるかは彼にかかっている」と先月27日のメンバー発表会見でコメントしたように、香川のフィニッシュの部分に大きな期待を寄せているのだ。
「前のポジションで間で受けて、前の3人だったり2トップ、1トップの選手と連係していくところはより求められるし、ラストの局面でどれだけ違いであったりを見せられるかを求められると思ってます」と香川本人もその狙いを十分理解している。
だからこそ、ドルトムントで見せているような臨機応変な判断とスペースへの侵入、そして精度の高いシュートを代表戦でも示すべきだ。得点に直結する仕事。それこそが、香川真司に託された最大のタスクなのである。
アルベルト・ザッケローニ監督時代もそうだったが、香川は代表に来るたび持ち味を出せずに苦しんできた。その最たる例が2014年ブラジルW杯だった。屈辱的惨敗を喫した世界舞台の後も、得点への意欲が強すぎるあまり空回りし、他の選手とポジションが重なったり、ボールタッチ数が激減したりしていた。
昨夏からの1年間での得点が、今年1月のアジアカップ・ヨルダン戦(メルボルン)の1ゴールしか奪えなかったのも、こうした迷いと混乱をどこか断ち切れなかったからではないか。
けれども、今の香川は6月のシンガポール戦の時と別人のように頭の中がクリアになり、メンタル的にも充実している。これまでの彼は、本田や岡崎や他の攻撃陣を自分から動かすような積極性や主体性を出し切れず、つねに本田ら年長者の意向に沿ってプレーする傾向が強かった。
そんな殻を破り、自ら力強く攻めのタクトを振るうことが、今回の香川に強く求められている。それができれば、彼は真のエースナンバー10になれる。
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