「FWの枚数減=攻撃力の低下」ではない!?
ざっとゼロトップの歴史を振り返ってみたわけだが、詳しくは拙著『サッカーFW陣形戦術クロニクル』を是非お読みいただきたい。と、宣伝させていただいたうえで恐縮なのだが、本のタイトルに入っている「陣形」はFWの進化にはあまり関係がない。さらに言ってしまえば「戦術」も。そもそも攻撃は戦術よりも技術によって左右されるもので、ボールを受ける、扱う、蹴るというテクニックがほぼすべてといっていい。
ペレのドリブルを止めるのは、メッシの突破を防ぐのと同じぐらい難しく、エウゼビオとクリスティアーノ・ロナウドのシュートはどちらもGKにとって脅威だ。それは戦術や陣形とは関係なく、ほぼ時代も超えている。
外見上、FWの数は減り続けてきたわけだが、必ずしも攻撃力の減退を意味しない。FWの仕事ができるMFやDFが増えてきたからだ。FWの減少は攻撃側の理由ではなく、ほとんど守備側の要請だ。守備の人数を増やすためにFWが減らされてきた。だからFWが不要になったのではなく、むしろ重要性は高まっている。
昨季のCLで優勝したバルセロナは、実は戦術的には後退し続けている。ただ、メッシ、ルイス・スアレス、ネイマールの技術と決定力がそれを補っていた。相手に攻撃すらさせず、一方的に攻めて勝つバルサではなくなったが、打ち合ったら必ず勝つバルサだった。サッカーが得点数を競う以上、そこにアドバンテージのあるチームが有利であり、これも陣形や戦術とは関係ない。
戦術と関連するのは守備の部分だ。かつてシーズン20得点のFWは立派なエースで、守備をしなくても問題ではなかった。しかし、現在守備免除が許されるのは40得点できるロナウドとメッシだけだ。20得点のFWなら、守備戦術に組み込まれた守備要員としての役割も果たさなければならなくなった。しかも、40得点のメッシもサイドにポジションを変えて相応の守備負担をするようになってきている。シーズン40得点のモンスターFWが守備でも貢献する…FWの理想像はとてつもなくハードルが上がってしまったようだ。
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