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Jリーグ 9年前

七転び八起き。苦しみつつ前を向く湘南。“監督じゃない感じ”チョウ監督との絆が選手を成長に導く

text by 藤江直人 photo by Getty Images

「リスクを冒すことと規律を守ることは、決して矛盾するものではない」

七転び八起き。苦しみつつ前を向く湘南。“監督じゃない感じ”チョウ監督との絆が選手を成長に導く
川崎F戦で決勝ゴールを奪ったFWアリソン【写真:Getty Images】

 永木が、そして右サイドにいたMF古林将太が自陣から猛然とダッシュする。相手ペナルティーエリア付近で再びボールをもらった永木がキープしながら相手を引きつけ、自分を古林が追い抜いていく時間とスペースを作る。

およそ60mを全力でスプリントしてきた古林が、フリーの状態からゴール前へクロスを送る。わずか3分前に投入されていたFWアリソンが完璧なタイミングで宙を舞い、強烈なヘディングを見舞った。采配がズバリ的中した決勝弾にもチョウ監督は自らを責め、選手たちを称えた。

「僕がはっきりとしたミスを犯しているのに、それを選手たちがはね返して逆転で勝つということは、間違いなく選手たちに力がついてきた証拠。彼らの成長には目を見張るばかりです」

 元日本代表監督のイビチャ・オシム氏がよく口にしていた言葉を、チョウ監督はベルマーレが目指すべき理想のゴールとして思い描いている。

「リスクを冒すことと規律を守ることは、決して矛盾するものではない」

 前出の著書では、自身と選手たちにそれぞれ自立を求める先にある究極の目標をこう記してもいる。

「リスクと規律をその時々の状況に応じて、絶妙なバランス感覚のもとでピッチ上において同時に体現させることが勝利への近道となる」

 反町康治前監督の退任に伴い、ヘッドコーチから昇格する形で監督に就任したのが2011年12月。選手たちと初対面したミーティングで、Jクラブを初めて指揮するチョウ監督は熱い思いを伝えた。

「技術論や戦術論が他の監督と比べて長けているわけではない。確固たるサッカー観や独自の引き出しをもっている自信もない。でも、ひとつだけ、どの監督にも負けていないと自負していることがある。いまここにいるみんなと一緒に成長してきたい、勝利をつかみ取りたい気持ちが誰よりも強いことだ」

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