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Jリーグ 9年前

七転び八起き。苦しみつつ前を向く湘南。“監督じゃない感じ”チョウ監督との絆が選手を成長に導く

text by 藤江直人 photo by Getty Images

早々の失点も「前への姿勢」を失わなかった選手たち

七転び八起き。苦しみつつ前を向く湘南。“監督じゃない感じ”チョウ監督との絆が選手を成長に導く
湘南のキャプテンを務めるMF永木亮太【写真:Getty Images】

 失点してからの戦いについて、永木はチーム全員の思いを代弁する。

「事故だったと思うようにしました。取られていないものだと気持ちを切り替えて、戦うしかないと」

 キックオフから1分と経たないうちに失点を許した試合として思い出されるのが、2013年4月27日のジュビロ磐田戦となる。このときは心が動揺したまま、なおかつ日本代表選手を擁する名門にどこか怯えたまま、0対4の惨敗を喫している。

 ひるがえって、フロンターレ戦はどうだったのか。

 ベルマーレらしさの源泉をなす「前への姿勢」を失うことも、元日本代表の中村憲剛を中心とする相手のパスワークを恐れることも、焦れて無謀な攻撃を仕掛けてバランスを失うこともなかった。

 ゴールキックを得た場合、フロンターレはGKからショートパスをつないでくる。迎えた前半11分。守護神・新井章太からパスを受けたDF井川祐輔との間合いを、すかさず菊地が詰める。井川が右サイドバックの武岡優斗へボールを預けると対面のMF菊池大介が、武岡が中村へパスを通すと今度は永木が連動してプレッシャーをかける。

 自陣のペナルティーエリア付近という焦りも手伝ったのだろう。中村からリターンパスを受けようとした武岡のトラップが大きく流れる。ボールが転がった先にフリーでいたのは藤田祥。新井を巧みにかわして叩き込んだ同点弾に、永木は思いを強くした。

「フロンターレも事故の失点だと思うけど、あれは自分たちかが前から行けている証拠でもあるので」

 クライマックスは後半31分。自陣の中央でパスを受けた永木が前方のFW高山薫へボールパスを預けた瞬間に、ベルマーレにあうんの呼吸でスイッチが入る。リスクを冒すならいまだ、と。

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