監督が選手から“自立”しなければならない
勝利という結果を残し、次のステージへ進むためには何が必要なのか。弾き出された答えは、困難に直面しそうな選手たちに手を貸し、課題克服へのヒントも与えてきたそれまでの自分との決別だった。そのための手段となる自立について、チョウ監督は著書でこう説明している。
「何も話さなくなるとか、あるいは距離を置くという意味ではない。ピッチ上の状況が秒単位で変化していくサッカーにおいては、選手個々がもっている発想のもとで、瞬間にひらめいたプレーが何よりも有効であり、意味をもつ。監督である僕が選手たちの『自立』を求めなければ、彼らはすべて言われたこと、授けられた戦術に頼ってしまう。そうなった時点でチームの成長は止まる」
選手たちの自立を促すには、まず監督が選手たちから自立しないといけない。すべての状況においてではないにせよ、自らに我慢を強いることで「可愛い子には旅をさせよ」の精神を貫く必要がある。
その観点で振り返れば、結果としてキックオフ直後のプレーを強いた形となり、他の選択肢がない状態でピッチへ送り出してしまった時点で、フロンターレ戦が行われた「2015年8月22日」は永久にチョウ監督の記憶に刻まれる。
「長い人生のなかで、勝って反省できる経験をさせてもらったのはすごくありがたいこと。こういうことを繰り返さないためにも、監督として絶対に忘れてはいけない日となる」
もっとも、指揮官へ厚い信頼を寄せているからこそ、選手たちは準備してきた戦い方を忠実に実践しようとする。いわばピュアな部分がフロンターレ戦での失点につながった一方で、自立を求められてきた戦いで培われた心の強さも頭をもたげている。
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