「選手たちが前へ行こうとする力をロックさせてしまった」
大きな弧を描きながら逆サイドへ走り込んできた大久保が、杉本からのリターンパスにダイレクトで左足を合わせる。強烈な一撃がネットに突き刺さった瞬間、チョウ監督は「9割方、負けると思った」という。
「試合のなかで一度でも監督がミスを犯せば、絶対に勝てないと僕は思っているので。あの失点は100%僕の責任。キックオフからノーホイッスルで失点したのは、選手を120%の状態で試合に入らせることができなかったから。彼らをそういう気持ちにさせてしまったことを反省しているし、本当にダメな監督だと思わずにはいられなかった」
一度ボールを下げて、三竿に藤田祥を狙わせたトライに対しては「後悔していない」という。ならば、何が指揮官を失望させたのか。
「相手の状況を見て、『変える必要があるならば変えろ』と言えばよかった」
選手たちの臨機応変さを奪ってしまったと、チョウ監督が自戒の念を込めて続ける。
「最終的には選手たちが判断すればいいところを、僕に色気が出たというか、こうしなさいと決め過ぎてしまった。選手たちが前へ行こうとする力をロックさせてしまった、という思いが僕のなかにあった」
ベルマーレを率いて3年目となる2014年シーズンから、チョウ監督は試合へ向けた選手たちへのアプローチを一部変えている。
今年2月に発表した初めての著書『指揮官の流儀 直球リーダー論』(角川学芸出版刊)で、チョウ監督は「自立への格闘」という章を立てている。そのなかで、2013年シーズンまでの自身を「子離れできない過保護な『ダメ親』だった」と振り返った上でこう記している。
「僕が選手たちから自立しないといけない」
J1で戦った2013年シーズン。善戦する試合が多かったものの、厚い壁をなかなか越えられない。最終的には6勝7分け21敗の16位で、残留することがかなわなかった。