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Jリーグ 9年前

七転び八起き。苦しみつつ前を向く湘南。“監督じゃない感じ”チョウ監督との絆が選手を成長に導く

text by 藤江直人 photo by Getty Images

「選手たちが前へ行こうとする力をロックさせてしまった」

 大きな弧を描きながら逆サイドへ走り込んできた大久保が、杉本からのリターンパスにダイレクトで左足を合わせる。強烈な一撃がネットに突き刺さった瞬間、チョウ監督は「9割方、負けると思った」という。

「試合のなかで一度でも監督がミスを犯せば、絶対に勝てないと僕は思っているので。あの失点は100%僕の責任。キックオフからノーホイッスルで失点したのは、選手を120%の状態で試合に入らせることができなかったから。彼らをそういう気持ちにさせてしまったことを反省しているし、本当にダメな監督だと思わずにはいられなかった」

 一度ボールを下げて、三竿に藤田祥を狙わせたトライに対しては「後悔していない」という。ならば、何が指揮官を失望させたのか。

「相手の状況を見て、『変える必要があるならば変えろ』と言えばよかった」

 選手たちの臨機応変さを奪ってしまったと、チョウ監督が自戒の念を込めて続ける。

「最終的には選手たちが判断すればいいところを、僕に色気が出たというか、こうしなさいと決め過ぎてしまった。選手たちが前へ行こうとする力をロックさせてしまった、という思いが僕のなかにあった」

 ベルマーレを率いて3年目となる2014年シーズンから、チョウ監督は試合へ向けた選手たちへのアプローチを一部変えている。

 今年2月に発表した初めての著書『指揮官の流儀 直球リーダー論』(角川学芸出版刊)で、チョウ監督は「自立への格闘」という章を立てている。そのなかで、2013年シーズンまでの自身を「子離れできない過保護な『ダメ親』だった」と振り返った上でこう記している。

「僕が選手たちから自立しないといけない」

 J1で戦った2013年シーズン。善戦する試合が多かったものの、厚い壁をなかなか越えられない。最終的には6勝7分け21敗の16位で、残留することがかなわなかった。

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