川崎F戦、開始早々の失点に謝罪する指揮官
劇的な逆転勝利の余韻が残る試合終了直後のロッカールーム。満足感と充実感を同居させている選手たちに対して、ベルマーレのチョウ監督はいきなり頭を下げた。
前半のキックオフからわずか15秒で、フロンターレのFW大久保嘉人に決められた先制ゴール。すべては自分に責任があると、チョウ監督は詫びた。
「僕はまったく喜べないから、お前たちだけで喜んでいい。お前たちは今日、選手の力だけで勝った。監督のミステイクを上回るパフォーマンスを出したことに対しては、何も言うことはない。僕は僕でしっかりと反省したい」
指揮官が笑顔を封印したのはなぜなのか。ベルマーレのキックオフで始まった一戦。ハーフウェイライン上にはいつものように、ベルマーレの選手が7人も並んでいる。主審のホイッスルとともに前方へ押し出されたボールを、さらに前へ運んでいく。J2を制した昨シーズンから実践してきた、「湘南スタイル」をいきなり全開にする“儀式”がこの日は一変していた。
FW菊地俊介が軽く前へ蹴り出したボールを、キャプテンのMF永木亮太は左後方にいるDF三竿雄斗へ下げている。チョウ監督が意図を明かす。
「今日はヨシ(藤田祥史)を使っているので、ボールを下げてから逆サイドのヨシの頭を狙わせて、そこから攻めていこうと考えていた」
利き足の左足からの正確無比なキックを武器とする三竿に、ロングパスを対角線で蹴らせる。5試合ぶりに先発したワントップの藤田祥がキックオフに関わらず、右サイドにいたのは奇襲を仕掛けるためだった。
数日前から思い描いていた青写真は、しかし、三竿のミスキックとともに暗転する。必要以上に力んでしまったのか。三竿のパスはフロンターレのFW杉本健勇の真正面へ飛んでしまう。前線に人数を割いていたベルマーレは、当然ながら守備陣形が整っていない。杉本から左サイドにいた大久保、そして杉本と流れるようにパスがつながっていく。