チョウ監督が見抜いた遠藤の“伸びどき”
過密スケジュールのなかで、チョウ監督もやみくもに選手たちをピッチへ送り出しているわけではない。遠藤に関しては、けがはもちろんのこと、違和感を抱えていないかどうかを慎重に見極めている。
ここで駆使されるのが、冒頭で記した指揮官の慧眼だ。ベルマーレのコーチ陣やフロントをも驚かせてきた「それ」に関して、チョウ監督は前出の著書のなかで「相手を観る・知る・好きになる」という章を立ててこう語っている。
「僕が選手たちを見る感覚は、親と子どもの関係と似ている。たとえばまゆ毛の形がちょっと変わっていても、会った瞬間に気づく。食事のときに座る位置や、一緒に食べる相手が変わったときも『あれ?』と思う。この話をするとたいていの人に驚かれるが、僕からすればなぜ気づかないのかと思ってしまう」
こうした感覚のもとで、帰国後にチームへ合流した遠藤の表情を見たときに何を真っ先に感じたのか。
「ここが伸びどきだ、と思いましたね」
チョウ監督は言葉を弾ませ、笑顔を浮かべながらこう続ける。
「若干22歳の選手が、A代表のプレッシャーのなかで3試合を戦った。プレー的にもそう(伸びどきと)だと。航の精神的な充実度、代表に行って『湘南でやってきたことが間違っていなかった』とわかった気持ちを、ピッチに落としてもらいたかったんです」
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