フットボールチャンネル

アジア 9年前

【現地レポート】日本サッカーに倣え。ベトナムの東南アジア王者奪還に向けた挑戦

text by 宇佐美淳 photo by Jun Usami

成長著しい経済情勢。日本企業も続々参入

【現地レポート】日本サッカーに倣え。ベトナムの東南アジア王者奪還に向けた挑戦
ベトナム代表の三浦俊也監督(左)。後ろのボードには多くの日本企業の名前が【写真:宇佐美淳】

 こうした背景もあり、日本人選手やエージェントの立場からすると移籍先としては“難あり”のベトナムだが、経済成長著しい同国市場を取り込むために、ベトナムでサッカーマーケティングを推進する日本企業は少なくない。電通の橋渡しにより、ホンダとヤンマーが代表チームのスポンサーとなっているほか、今季からはトヨタ自動車がVリーグの冠スポンサーを務めている。

 因みに、バイク社会であるベトナムにおいて“ホンダ”(ベトナム語でホンダはバイク全体を指す言葉としても使われる)は圧倒的な市場シェアを誇り、トヨタ車は自動車販売台数の売れ筋ランキングで上位を独占している。

 また、ヤマハは毎年少年サッカー向けのイベントを開催しており、元五輪日本代表監督の山本昌邦氏が北部ハノイ市を訪れ、直接子供たちの指導に当たっている。今年はトヨタも同様のイベントを南部ホーチミン市で開催した。こうした活動は、ブランドのイメージ向上を狙ってのものだ。

 クラブレベルでもベトナムに進出しようとする動きは活発だ。例えば、スポンサー同士が共同で都市開発案件を手掛けている川崎Fとベカメックス・ビンズオン(昨季のリーグ王者)は、トップチームや下部組織の親善試合を頻繁に開催。東南アジア戦略に野心を燃やすJ2の札幌は、Jクラブとして初めてVリーグのドンタム・ロンアンと提携を結び、若手の人材交流などを行っている。

 近い将来、両国クラブの提携が増えていけば、人材交流も一層活発になることが予想される。2013年には、「ベトナムの英雄」と呼ばれる同国代表FWレ・コン・ビンが札幌に期限付き移籍を果たし、東南アジア人初のJリーガーとなったが、今後も提携国枠を活用して東南アジアの代表選手や若手の獲得を狙うクラブが増えてくるに違いない。

 ベトナム代表選手の中からも、更なるレベルアップのために日本行きを希望する声は聞かれる。いざ移籍となると、制度上の様々な問題に直面するようだが、日本で得る経験は必ず彼らとベトナムサッカーの成長に寄与することだろう。

【了】

1 2 3

KANZENからのお知らせ

scroll top
error: Content is protected !!