中国が勝てば優勝、日本は勝たなければ史上初めて一勝もできずに大会を終えるという状況で、東アジアカップ男子の最終戦がスタートした。試合前から雨が降り出し、全12試合のうち、このゲームだけが雨中での戦いとなった。前半、中国が先制し日本が追いつく。後半は最後まで両チームとも攻撃が停滞して決勝点を奪えず、結局1-1の引き分けとなった。
試合は意外な立ち上がりとなった。10分、ペナルティエリア内で中国が起点を作り、ペナルティアークに入り込んできたウー・レイにパスが渡る。ウー・レイが思い切り振り抜いた右足から放たれたボールは、丹羽大輝に当たってコースが変わり、東口順昭が守るゴールのネットを揺らした。
もっとも、最初に試合の流れを掴んだのは日本のはずだった。4分、CKからのこぼれ球を宇佐美が狙うが、ポストを直撃する。その後も日本はボールをキープしながら、中国陣の中を組み立てながら攻めようとした。
だが、それは中国の思惑と合致した。日本に体を激しくぶつけて潰し、そこからの逆襲速攻の形を作る。そんな力強いプレーが日本には有効だった。8分にはゴール前に走り込んだガオ・リンがゴール右に鋭くシュートを飛ばす。27分にはウー・レイが縦パスに抜け出してフリーとなった。だが、この攻撃の後に中国はスローダウンしてしまう。
前半も半ばを過ぎたころから、日本は中国のチェックにやっと慣れてきた。スライディングが飛んでくる、腕を引っ張られる。後ろから体をぶつけられるという守備を、判断を速くすることでくぐり抜けられるようになった。
すると41分、中国の守備ラインが一瞬動きを止める隙を作った。そのスペースに槙野智章がスルーパスを出す。走り込んだ米倉恒貴はダイレクトで中央へ。そこには武藤雄樹が相手を振り切って走り込み、そのままスライディングで同点ゴールを叩き込んだ。
後半が始まると、日本が一層ペースを握った。パスはより通るようになり、組み立てはスムーズになった。ところがアタッキングサードに入るとたちまち失速し、なかなかシュートに結びつかない。後半、唯一の見せ場は71分。ハイプレスで奪ったボールを山口螢が武藤に繋ぎ、武藤はGKと一対一に。だが、このシュートはGKのブロックにあって日本はゴールを奪えなかった。
63分、中国は長身FWヤン・シューを投入し、パワープレーを仕掛けてきた。執拗にハイボールをヤン・シューに集め、日本の守備を揺さぶろうとする。だがハイボール対策を施した守備陣が踏ん張った。東口は「後半は守備ラインが高い位置をキープしてくれて、自分のところまではボールが来なかった」と、守備陣の出来を振り返る。
だが、その守備の奮闘があっても攻撃はゴールという実をもぎ取ることができなかった。結局、両チームともそれ以上ゴールを挙げることができず、試合は1-1の引き分けで終わる。その結果、1位韓国、2位中国、3位北朝鮮、4位日本という順序で大会は終了した。
試合後、1トップを務め、1ゴールも挙げられなかった2人は悔しそうに振り返った。
「監督に鍛えられなかったのが今回だったと思います。もう少しやらなければいけませんでした。また成長できるように……。真っ直ぐ受けることが多かったから、そこに角度をつけて基点になるように裏に抜けるような動きができるようになりたいと思います」(川又堅碁)
「シュートも打てていないから……。監督からチャンスはもらったのに、それをモノにできるかどうかで……フィジカル面も足りないと思うし……つなぎはできるで、あとはゴールを決めるとか、そういう貪欲さかなぁと思います。……。代表ではまだ点を決めていないので早く決めたいと思います。武藤に先を越されたので……」(興梠慎三)
このストライカー2人を含め、参加した選手たちが今後伸びるかどうかで、この大会の価値は変わる。そうでなければ、今回の大会は日本にとって屈辱以外の何者にもならなかった。
(記事提供:PERFORM/ePlayer)
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