学校で行われる反日教育
クリストファー・アトキンス記者は広州在住のイングランド人。中国に住んで4年、流暢な中国語を話し、フラットな目線でこの大国を見ている。
「中国の反日感情の理由は様々です。ご存知のように歴史的な問題があり、それに紐付けられる教育上の影響は大きいです。また、政治的な問題もあります。現在日本政府は本当の中国の姿を適切に伝えていないので、いいイメージを持たれていません」
アトキンス氏は読みかけの現地新聞を見せてくれた。そこにはかわいらしいパンダをモンスターとして描いている安倍晋三首相と思わしき人物が描かれている。先に発表された「防衛白書」で日本政府は中国への警戒と批判を強めたが、それを中国側は良く思っていない。中国共産党の意図を現地メディアは寸分違わぬよう伝えている(中国では報道に共産党中央宣伝部による検閲が入る)。
中国人記者はどう見ているのか。30代の男性記者A氏は匿名を条件に取材に応じてくれた(日本語の記事とはいえ、A氏は宣伝部の監視により取材活動を制限されることを懸念している)。
「反日教育と言えば、そうなのかもしれません。私たちは学校『日本の歴史と政治に嘘がある』と習います。もっとオープンになれば違ってくると思うのですが……。中国政府は本当の情報をあまり出しません。日本とは冷戦のような状況なのかもしれません」
A氏は1つひとつ言葉を選びながら話す。センシティブなことのため慎重だ。そして、「しかし」と強調して付け加える。
「政府と国民は関係ありません。端的に言えば、多くの国民は国際問題にそこまで関心がありません。むしろ民族意識の強さの問題です。例えば、香港代表の試合では中国国歌が流れますが、ブーイングが起きます。中国と香港が近く試合をしますが、何か問題が起きるでしょう」
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