邪魔された「君が代」
それは紛れもなくブーイングだった。
8月1日、中国・武漢で開催中のサッカー・東アジアカップの日本女子代表対北朝鮮女子代表の一戦。試合開始前に「君が代」が流れると、大きくはないが国歌を邪魔する音が聞こえた。翌日の男子も同様だった。
試合中、現地の中国人観客は北朝鮮のチャンスに大歓声をあげ、日本のミスを喜んだ。現地在住の朝鮮人によるサポーター集団もいたが、全体で見れば少数だ。
中国と対戦しているわけでもないのに、この反応――。中国でサッカーの国際大会があるたびに「中国の●●は反日感情の強い地域で……」という情報が出てくる。武漢も同様に「反日が……」と言われた都市で、私も東アジアカップ初日の反応を見て「これはすごいアウェイだな」と思わざるを得なかった。
しかし、実際に何日間も滞在してみると、それとは違った感触も得ることができた。タクシー運転手、ホテルの従業員、飲食店の店員、銀行員、そして別日のサッカースタジアムで感じたのは、北朝鮮戦とは異なるものだ。日本対韓国の試合では日本バッシングはまったくと言っていいほどなかった。
もちろん過去や現在の一連の報道が100%間違っていると言うつもりはない。BBCが2014年に発表した調査では、中国人の74%が「日本はネガティブな影響のある国」と回答している(【注PDF】http://www.worldpublicopinion.org/pipa/2013%20Country%20Rating%20Poll.pdf)。
果たして、中国人の本当の姿とは何だろうか。中国は、武漢は、反日的なのだろうか。現地記者、市井の人々の声をもとに検証していく。