対アジアでも効果がなかった堅守速攻プラン
北朝鮮に放り込まれるまでは、守備はさほど崩されていない。山口と谷口のボランチコンビも攻守に効いていた。とはいえ、川又と永井が前線でキープできず、なかなかカウンターが形にならなかった。自陣に押し込まれることを前提にしているのだから、カウンターの形が上手く作れないのではやはり堅守速攻は成立しない。
逆に前半32分のピンチのように、相手にカウンターを許す場面もあった。宇佐美が20メートルスプリントしていればシュートした北朝鮮の16番はフリーになっていない。堅守もやや怪しかった。さらに高いボールを放り込まれると、やはり耐えきれない。このあたりは06年W杯でオーストラリアに負けたゲームとよく似ていた。相手の土俵に引きずり込まれている。
それでもまだ日本にはチャンスがあった。相手のパスミスから4対2になった場面があり、早いリスタートからの永井のシュートもあった。柴崎を投入してからは、パスワークから崩せていたし、押し込んで連続的に攻撃した時間帯もあった。これを最初からやっていれば、おそらく日本はもっと有利に試合を運べていただろう。
日本の対アジア戦法は確立されていた。ポゼッション能力を生かして相手を押し込み、カウンターを遮断しながら攻め続ける。押し込んでしまえば相手の高さは脅威にならない。課題は決定力、そしてカウンターをいかに阻止するか。そこまでは出来ていた。
しかし今回は、従来の戦法ではなく堅守速攻型。あえて対アジアで確立されていた戦法ではなく、W杯で必要となる戦い方をしたといえる。しかし、それがアジアでも通用しなかったわけだ。選手のテストとしてはそれなりに意義があったかもしれないが、この試合に勝つということでいえば、ゲームプランと人選に問題があった。
【了】