夏の縁日のようにざわついたスタンド
練習試合は難しい。まずスタジアムの雰囲気が、ピリッとしない。2015年8月1日、ドルトムントはスペイン1部のベティスとテストマッチを行った。ドルトムントにとっては、プレシーズンで最後の練習試合である。場所は世界最古のモノレールが走る街、ウッパータールだ。
先発した香川真司は「普通の練習試合の雰囲気だった」と振り返った。一昨日のヨーロッパリーグ、ボルフスベルガーAC戦のように、ゴール裏に裸で気勢を上げる連中はいない。クラーゲンフルトで焚かれた発煙筒は、ウッパータールでは冷えたビールにすり替わった。
香川は「ちょっと最初の入りもぬるかったし、それが上手く改善できなかった」と言う。もちろんBVBの選手たちにやる気がなかったという訳ではない。2日前のヨーロッパリーグの初戦で先発から外されたからと言って、不貞腐れている暇はない。2ndレグは次の木曜日にやってくる。
しかしスタンドはざわついている。夏の縁日のようだった。ゲームに対する集中が、公式戦のようにいかないところがある。香川は「ゴールを決めるチャンスもミスが多かった」と振り返る。
12分、ライトナーのスルーパスに抜け出したクーバのシュートは、ゴールの右ポストに当たって右に逸れた。クーバだけではなく、BVBは最後のところで精度を欠いた。
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