トップレベルに最も近い男、マット・ライアン
残念ながら、今年、来豪したクラブのいずれにもオーストラリア人選手は所属していなかった。現在、いわゆる世界のメガクラブやそれに準ずるクラブでプレーをしている豪州国籍の選手はいない。
自国開催のアジア大会を制してアジア王者の座を射止めた豪州が、世界のサッカーシーンでこれまで以上に重要な役回りを演じていくのに足りない要素は、まさにこの部分だ。豪州には、出来るだけ早くワールド・クラスの選手を育成、サッカー界のトップレベルの人材を輩出することで、世界のサッカーシーンでのプレゼンスを向上させることこそが求められている。
現役の選手で世界のトップレベルの一番近いところいると評されるのは、サッカルーズの正GKとして欧州での評価も非常に高いマット・ライアン。
7月21日、ベルギーのクラブ・ブルージュからリーガ・エスパニョーラのバレンシアへの完全移籍が発表された逸材はリバプールなど欧州の名だたるクラブから興味を持たれるなど、その去就には国内外からの注目が集まっていた。
そんな中で、欧州の中堅国ベルギーで2年連続最優秀GKに輝く確固たる実績と共にライアンは、リーガの名門へと確実にステップアップを果たした。
近い将来、23歳と若い彼が欧州のビッグクラブのゴールマウスに敢然と立つ姿を見られる可能性は決して低くはない。
そんなサッカルーズの守護神の凱旋試合が豪州で行われ、多くの人々が母国の英雄に心からの声援を送るために“大箱”を埋める――そんな光景が現実のものとなった時、豪州サッカーは、“世界標準”に近づく階段をまた一段上ることになるだろう。
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