選手たちの骨の髄まで染み込んだハードワークへの意識
発売中の『フットボールサミット 雷鳥は頂を目指す』のインタビューで苦笑いしながらトラッキングデータを受け止めた反町監督は、決して恵まれているとは言えない陣容で初めてJ1に挑んでいる松本山雅FCの生命線をこう説明している。
「ウチはボールを保持できるチームではないので、ボールを支配するのではなくスペースを支配すると俺はずっと言ってきた。攻撃だけではなくて、守備でも相手より先にスペースを埋める、あるいは逆サイドを絞るためには攻守を素早く切り替えないといけない。そのためには、走力というものが必要になってくる」
攻守両面におけるハードワーク。選手たちの骨の髄にまで染み込み、いわゆる「一丁目一番地」として徹底されているからこそ、走行距離とスプリント回数で後塵を拝するわけにはいかない。
ここまであげた白星は、すべて相手を零封している。愚直に、泥臭く、体を張って何度もゴールを守り抜いてきたここまでの軌跡に、岩上はプライドを込める。
「僕たちが走らなくなったら、余計に勝てなくなる。セカンドステージでは他のチームの運動量が10%くらい落ちていると聞いているし、そのなかで僕たちは『絶対に落とすな』と言われている。走れていることには手応えも感じているし、戦い方もある程度構築できている。そこは自信をもってやっていきたい」
理想として描いてきた戦い方を、松本山雅FCは幾度となくピッチの上で具現化してきた。その象徴が、ともに2対0で勝利したファーストステージのヴァンフォーレ甲府戦とヴィッセル神戸戦だ。
2試合の総走行距離を比較すると、ヴァンフォーレ戦は112.03kmに対して102.99km、ヴィッセル戦では119.87kmに対して109.62kmと松本山雅が約10kmも上回っている。