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Jリーグ 9年前

『ドS』と『ドM』あうんの呼吸が生み出した走力。J1残留へ、“一人多い”松本山雅が挑む真夏の消耗戦

真夏の消耗戦に突入したJ1のセカンドステージ。今シーズンから公表されているチーム走行距離とスプリント回数ですべての対戦相手を上回ってきた松本山雅FCは、反町康治監督のもとでその体に搭載してきたストロングポイントをさらに前面に押し出し、J1残留へ向けて突っ走る。

text by 藤江直人 photo by Getty Images

42勝0敗。走行距離とスプリント回数で相手を凌駕

 敬意を込めながら、反町監督をはじめとする首脳陣をMF岩上祐三はこう呼ぶ。

「ドSですね」

『ドS』と『ドM』あうんの呼吸が生み出した走力。J1残留へ、“一人多い”松本山雅が挑む真夏の消耗戦
岩上祐三【写真:Getty Images】

 苦笑いとともに思い起こすのは、反町体制になってからの開幕前のキャンプ。ボールを使うことなく、とにかくひたすら走ってきた。一日で走破する距離が十数キロにも及ぶこともあった。

「正直、そこまで走るのか、というくらい走らされてきました。走ることが嫌いと言えば語弊があるかもしれないけど、ボールを使わずに毎日のように走って、走ってだったらねえ。ただ、首脳陣は僕たちが走っていると笑顔になるんです。なかにはふて腐れながら走っている選手もいるけど、文句を言いながらも明るく楽しくやっています」

 精根尽き果てる相手をながめながら笑う首脳陣が『ドS』ならば、岩上をはじめとする松本山雅FCの選手たちはさながら『ドM』となるのだろうか。反町監督が就任して4シーズン目。両者の厚い信頼関係のもとで育まれてきた「走力」という財産に、岩上は誇りを覚えている。

「走らなきゃ僕たちは戦えないし、やっていけない。チームの根本的な部分に『走る』ことがあるし、それは続けていかなければいけない。セカンドステージが始まって、夏場の暑い戦いで勝てるようになってきているのは、いままでの練習が実になっているから。そこは自信になっています」

 42勝0敗――。Jリーグが今シーズンから導入しているトラッキングシステムは、松本山雅FCの「矜持」を数値化していると言っていい。

 最新鋭のミサイル自動追尾技術が応用されたトラッキングシステムは、メインスタンドに設置された2台の専用カメラでピッチ上のすべての動きを捕捉。選手の走行距離とスプリント回数を解析してきた。

 その両方のデータで、松本山雅FCはセカンドステージの第4節までの計21試合ですべての対戦相手を凌駕している。ゆえに42勝0敗という数字が弾き出される。

「それだけだ。それで勝ち点3をくれるのならば、もっと走らせるよ」

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