カンプルを“偽9番”に置いた4-3-3
なるほど確かに似ていた。2015年7月17日に行われたVfLボーフムとのテストマッチで、テクニカルエリアからトーマス・トゥヘルは、身振り手振りを交えてドルトムントの選手達に指示を送る。その少し大袈裟なジェスチャーは、まるでペップ・グアルディオラのようだった。
主に中盤がダイヤモンド型の4-4-2を試して、1-2で敗れたボーフムとのテストマッチの中では、トゥヘルが傾倒するというペップの痕跡がいくつか見られた。基本的にはポゼッションを大事にして、敵陣に人数を掛けようとする。そして後方に生まれるスペースを突かれてピンチを招く。
33分には、ショートカウンターから最後はテラッツィーノにゴールを決められている。こうしたカウンターからの失点は、一昨年から常にバイエルンに付きまとう課題であり、ポゼッション・フットボールの性質と言える。
また後半の62分から用いられたカンプルを偽9番とする4-3-3は、ペップがFCバルセロナを率いた時代に採用した、メッシをワントップに据えた4-3-3そのものだった。しかしボーフムとのテストマッチで、最も顕著だったトゥヘルのペップらしさは、カンプルを偽9番に置いたことそれ自体にあるのかもしれない。
既成概念に捉われないことこそが、何よりのペップらしさとも言える。就任1年目には、攻撃時はインサイドにポジションを取るSBを披露したように、ペップのサッカーは発見と驚きに満ちている。
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