攻撃陣の大きな穴、どう埋めるのか?
ショートパスを主体にボールを動かし、集団で集団を剥がす川崎のサッカーにおいて、1人で複数人を剥がす力を持つレナトの存在は大きかった。彼がボールを持てば複数の相手の目線を左サイドに集中させることができ、中央の人間は相手を“外し”やすくなる。
これによって恩恵を受けていたのがチームの絶対的エースである大久保嘉人だ。レナトの左サイドでの突破からファーサイドで大久保が詰めることも多かったし、彼がマークを引き寄せることで大久保の中央での負担が減っていた。いずれにせよ、ドリブラーのもたらすアクセントはどんなスタイルのチームでも武器になるもの。
そして、Jトップクラスである彼が抜けた穴は、冒頭の森谷の一言に凝縮されるように、とてつもなく大きい。
この大きな穴を埋めるために、クラブは新たなブラジル人選手の獲得に動いている。「エウシーニョを取りに行ったときにある程度の選手も見ている。前の(ポジションの)選手というと他にもいたし“こういうタイプでこういう選手がいる”という情報は持っていた」(庄子強化本部長)と元々リストアップされていた選手に触手を伸ばす予定だ。
詳しい名前は明かされなかったが、若い、アタッカータイプの選手だという。だが、Jの中でも最も体得するのに時間がかかると言ってもいい川崎のサッカーにフィットするかどうかは「来てみないとわからない」(庄子強化本部長)のが本音。
となると、今後加わるであろう新戦力に期待をかけるよりも、現有戦力の奮起に期待を寄せたいところだ。負傷で前半戦は思うような活躍ができなかった小林悠や、5得点はあげているものの出場時間に物足りなさを覚える杉本健勇、そして高い技術と動きの連動性を武器にするが未だゴールを挙げられていない船山貴之など、“試合に飢える”タレントが揃っている。