ブームを文化へ、再び頂点へ、前へと歩み始める
そして、花束を抱えてベンチに下がろうとした瞬間だった。埼玉のサポーターたちから、期せずして「岩清水コール」が沸きあがった。タッチライン際で立ち止まった岩清水は、相手チームのサポーターたちへ体を向けて一礼した。またひとつ、新たな力をもらった。
累積警告による出場停止処分で埼玉戦を欠場した岩清水だったが、キャプテンとしてチームに帯同。裏方としてチームを支え、スタンドで1対0の勝利とINAC神戸レオネッサを抜いての首位浮上を見届け、試合後には有吉らとともに拡声器を手にしてサポーターに勝利を報告した。
その姿を見ながら、ベレーザの森栄次監督は目を細める。
「チームに合流してからは、明るく振る舞っていますよ。責任感の強い子ですからね。(メンタル面は)大丈夫でしょう。次ですか? もちろん先発で使いますよ」
迎えた17日。敵地で行われたジェフユナイテッド千葉レディース戦で、岩清水はキャプテンとして先発フル出場。ともにW杯を戦った菅澤優衣香に同点ゴールを決められ、INAC神戸に再び首位の座を譲ったものの、唯一となる開幕からの無敗はキープした。
平均年齢が20歳代前半と若いベレーザにとって、逆転優勝を狙うには経験豊富な岩清水の存在は欠かせない。なでしこジャパンに目を移せば、来年のリオデジャネイロ五輪出場をかけたアジア最終予選が同2月から大阪で開催されることが決まった。
長くなでしこの最終ラインを統率してきた岩清水の力は、まだまだ必要となる。ブームを「文化」とするためにも顔を上げて、ブログに書き記した覚悟を実践していくしかない。「感謝。」のブログにも約600件のコメントが寄せられている。すべてのエールを力に変えて、岩清水は再び前へ進み始めた。
【了】