前半33分、非情の交代を告げられる
スイス女子代表とのグループリーグ初戦で左足を骨折。日本で治療に当たっていたFW安藤梢(フランクフルト)も駆けつけ、ベンチから声援を送った大一番。キックオフ前には晴れやかな笑顔を浮かべていたなでしこたちの表情は、開始早々にこわばってしまう。
前半3分。右コーナーキックからMFミーガン・ラピノーが低く、速いボールをマイナスの方向へ蹴ってくる。ペナルティーエリアの外から、トップスピードで走り込んできたのはMFカーリー・ロイド。クリアの体勢に入っていた岩清水の背後から前に入り、左足をボールにヒットさせてコースを変える。
強烈な弾道がゴールの左隅に突き刺さった瞬間にアメリカは気迫で日本を飲みこみ、ペースを一気にもっていってしまった。わずか2分後。今度は右サイドで得たフリーキックを、MFローレン・ホリデーが再び低く、速いボールを入れてくる。
混乱をきたした日本の守備陣の対応が遅れる。ゴール前で無造作に弾んだボールに、再びロイドが詰めてくる。背後を取られ、体勢を崩した岩清水は、強引にボールを押し込み、咆哮をあげるアメリカの背番号10をなす術なく見送るしかなかった。
思考回路をリセットできずに迎えた前半14分。右サイドからMFトビン・ヒースが送ったクロスが岩清水の目の前で弾む。人工芝のピッチでボールが予想以上に滑ったのか。ヘディングのクリアはほぼ真上へあがり、詰めてきたホリデーにダイレクトで押し込まれた。
その2分後にはハーフウェイライン付近からの超ロングシュートで、ロイドにハットトリックを達成される。FW大儀見優季(ヴォルフスブルク)の意地の一撃が決まってから6分後の前半33分。非情の選手交代が告げられる。
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