苦悩の時を過ごしたシュトゥットガルト時代
昨季の終盤、シュトゥットガルトで酒井は出場機会を失った。3月13日のレバークーゼン戦で61分にピッチを退いて以来、再び酒井に出番が訪れることはなかった。チームの残留を掛けた最終戦はベンチで見守っていた。
リーグ後半戦が始まってまもなく、シュトゥットガルトは最下位に沈んだ。酒井にも葛藤があった。色々と考え過ぎてしまう。個を出そうする。チームのバランスを崩しているように見られる。チーム力を見て動こうとする。それは得意なことではないから、ミスが目立ったりしてしまう。
するとリズムを掴みにくくなり、プレーが伸び切らない試合があった。シュトゥットガルトで最後の出場となった3月のレバークーゼン戦は、その最たる例と言えるのかもしれない。
シュトゥットガルトで失ったリズムを取り戻す。つまりシンプルな縦パスは、そのための積極性の一つの表れと言えるだろう。もちろん縦に付けるばかりではない。試合状況に応じてタメを作るべきところは、落ち着いてタメを作る。
チームにとってのアクセントを意識した。初戦で出番がなかったように、酒井は競争状態の中にある。最終的にはポジションを確保しなければならない。そのためにもまず、試合勘を取り戻す必要はある。
そしてポジションを確保するために、酒井は最終的にHSVへの移籍を決断した。しかし、それが決断の理由の全てではない。
【次ページ】酒井高徳、ドイツで新たな挑戦へ