シャビのような別れを望むも…
イケル・カシージャスとシャビ・エルナンデスの二人がよく比較にあげられるのは、宿敵のチームに所属しながらも、それぞれが自らの所属クラブに強い誇りを持っている点で共通しているからだ。
二人とも、クラブチームで試合に負けた日には、悔しさのあまり、夕食が口に入らないタイプだ。これは、異なった機会にそれぞれの口から直接聞いたのだが、ダービー戦で負けても、すぐに誕生日パーティを開くご時世だ。
1試合負けても勝っても、年俸に響くわけではない。悲しいかな、そんな商業化の進んだサッカー界の中で、カシージャスはシャビ同様、サッカー界における最後のロマンチストの一人であり、だからこそ、サポーターからの共感を常に得て来たのだった。
その一方で、この数年―2010年を境に―そういったサポーターからもホームでブーイングを浴びせられることが増えた。ジョゼ・モウリーニョがマドリーにやってきたシーズンから、カシージャスは貶められ、それまでの正守護神から、評判ほどではないキーパーへと屈辱の格下げを受けた…。
――というのが、一般の定説だが、それは一つの側面に過ぎない。FCポルトに移籍することが発表された日、カシージャスの両親がスペインのエル・ムンド紙の取材に応え、断言した。「彼を追い出したのはフロレンティーノ(・ペレス会長)だ」、と。
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