身を結ぶ育成。スタメン8人がU23世代
今回の東南アジア競技大会でサプライズを演じたU-23カンボジア代表選手の半数以上は、手島氏が直接指導した選手たちだという。手島氏に怒鳴られて泣き出してしまったというプラク・モニー・ウドムもその一人で、カンボジアに通じる関係者からは必ず名前が挙がる期待のアタッカーに成長している。
JFAのアジア貢献事業の一環で技術委員長としてカンボジアに派遣され、W杯アジア2次予選の最初の2試合は監督代行を務めた小原一典氏は、東南アジア競技大会を前にU-23カンボジア代表についてこう語っていた。
「日本人が育成から見てきた今のU23世代は、東南アジアには珍しいハードワークのできるチームです。驚かせる可能性がある、本当に面白いチームだと思いますよ。注目してください」
東南アジア競技大会で見せたパフォーマンスは、小原氏の言葉通りのものだった。大会前のトレーニングマッチでもシンガポールなどに勝利を収めており、東南アジア内でも「やられ役」という印象だったこれまでのカンボジアとははっきりと違った。
カンボジアは今回、史上初めてW杯アジア2次予選に駒を進めたが、1次予選の初戦でマカオを3-0と下した試合ではスタメンの8人がU-23代表を兼ねていた。彼らが不在だった2次予選初戦は全く異なるメンバーの“カンボジア代表”であり、この世代で劇的に飛躍した国だけに、その差は大きなものがあるのだ。
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