「いいことも悪いことも岐阜でたくさん学んで吸収できた」
――今回のコラボが発表されてから『聲の形』や大今さんの存在を知らなかったサポーターが結構コミックスを購入して読んでいるようなんですが、最後にそういう方たちに向けて何かメッセージをいただけませんか?
「10代の頃、いいことも悪いことも岐阜でたくさん学んで吸収できたおかげで漫画を描くことができたと思います。岐阜が私を育ててくれました。本当にありがとうございます」
文字にすると大今さんがよどみなくしゃべっているように感じられるかもしれないが、実際はそうではなく、ひとつひとつの質問に対して自分の心の中を慎重に両手で探るように言葉をさがして答えてくれた。それは『聲の形』の西宮硝子のようにも見えたし、主人公の石田将也にも通じるところがあるようにも感じた。
7月12日、大今さんはスタジアムで何を見て何を感じ取るのか。繊細で精緻なガラス細工のような心にスタジアムの熱が加わるとどうなるものなのか。今からとても楽しみである。
今回のFC岐阜が行うコラボは『聲の形』を軸にしたマルチなものとなっている。それは単に『聲の形』の人気に便乗しようとするものではなく、楽しみながら社会貢献の意味合いを含んだものとなるだろう。そのことはFC岐阜がホームタウンの人たちにとって「なくてはならない存在」となる大きな道しるべとなるのではないかと思う。
この試みがFC岐阜ファンにとって、また『聲の形』ファンにとって、そしてJリーグそのものにとって、この先意義深いものとなるよう願ってやまない。
【了】
プロフィール
大今良時(おおいま・よしとき)
1989年年3月15日生まれ。岐阜県大垣市出身の漫画家。『聲の形』で『週刊少年マガジン』第80回新人漫画賞に入選。2009年『マルドゥック・スクランブル』(原作・冲方丁、全7巻)で連載デビュー。2013年より『週刊少年マガジン』にて新人賞受賞作のその後を描く形で『聲の形』の連載を開始。2014年の連載終了と同時にアニメ化を発表。2014年コミックナタリー大賞1位を受賞。「このマンガがすごい! 2015」オトコ編第1位。第19回手塚治虫文化賞新生賞受賞。
7月12日(日)に長良川競技場で行われるFC岐阜対横浜FC戦(18:00キックオフ)では『聲の形』とのコラボマッチが開催され、作者・大今良時さんによるスタジアムサイン会や原画展、この日スタジアムでしか手に入らない『聲の形』×FC岐阜のコラボグッズ数種類が販売される。また、当日はろう者によるデフフットサル女子日本代表選手が来場しての激励会、活動支援ブースの設営等も予定されている。