再び偉業を達成した「スウェーデン・モデル」とは?
ホートンとホジソンが作り上げた土台をさらに強化したのが、のちにイタリアのラツィオやイングランド代表を率いることになるスヴェン・ヨラン・エリクソン氏だ。
1979年にIFKヨーテボリの監督に就任したエリクソン氏は4バックをベースとしたゾーンディフェンスに加えて組織力と規律、それに鋭いカウンターアタックをチームに植え付け、1981-1982シーズンにはUEFAカップ優勝に導いた。
イングランドから輸入されたゾーンディフェンスを基盤とした4-4-2システムに、小国スウェーデンらしいメンタリティが加わったのが「スウェーデン・モデル」だ。
スウェーデンの著名サッカージャーナリスト、エリック・ニーヴァ氏の著書『Den nya varldsfotbollen』(英訳:The new world football)の記事「Den svenska modellen」(英訳:The swedish model)で紹介されているスウェーデンらしさというのは、要約すればこうだ。
「(厳冬により)1年中サッカーができない自分たちは世界の大国と比べるとテクニックに秀でた選手を輩出するのは困難だ。個々の能力で劣るのなら、チームプレーや組織力に磨きをかけなければならない。ポジションに関係なく11人全員がハードワークを惜しまず、攻撃時はつねにゴールへの最短距離を選択する」
1994年の米国W杯でスウェーデン代表の虜になってからこの国のサッカーを追いかけている筆者自身、ハムレーン監督が就任した当初は「これまでとは違うアタッキングフットボールが見られるかもしれない」と、一見聞こえのいい「攻撃サッカー」という言葉に心を躍らせた。
だがいまのフル代表を見ていると、日韓W杯でアルゼンチンを苦しめたような強豪国と互角に渡り合うサッカーを見ることはほとんどないと考えている。もし来年のEURO本大会に出場したとしても、グループリーグを突破するのは難しいだろう。
「来年のEUROでは生まれ変わった代表チームをぜひとも見たい」
こう語るのは、先述したブロリン氏だ。チェコで偉業を達成したU-21代表チームの戦いぶりはハムレーン監督率いるフル代表に、しいてはチームプレーや戦術理解よりも個々の技術に重きを置くスウェーデンの育成にどのような影響を及ぼすのか。
「スウェーデン・モデル」は復活するのか。楽しみだ。
【了】