スウェーデンサッカーの礎を築いた2人のイングランド人
今大会、個々の能力ではチームでもトップクラスに入る4人の選手がレギュラーではなかった。
ボルシアMGのスーパーサブであるブラニミル・フルゴタ、セリエAのパレルモでプレーするロビン・クアイソン、チーム随一の技巧派アタッカーとして将来を嘱望されるシモン・グスタフソン、1月からオランダのヘーレンフェーンに移籍して後半戦だけで8得点をマークしたドリブラーのサム・ラーションだ。
個々の能力よりもチームのためにどれだけ動けるか、たとえば中盤の両サイドはクアイソンやラーションよりもハードワークを厭わないアブドゥル・ハリーリやシモン・ティッブリングがおもにスタメンでプレーした。エリクソン監督の信念が反映された起用法であり、そしてスウェーデンらしさが表れている。
スウェーデン・モデル――高負担・高福祉をベースにした持続可能な社会システムと高い経済競争力を持つという、資本主義や社会主義とも異なる「第3の道」として世界で注目されてきた運営方式だ。
この「スウェーデン・モデル」という言葉は、スウェーデン国内のみではあるが同国サッカーの特徴を表す言葉としてよく使われている。
サッカーにおける「スウェーデン・モデル」の基礎を作り上げたのはイングランド出身のボブ・ホートンとロイ・ホジソンの2人。1974年にホートンがマルメFFの監督に就任して同年にリーグ制覇を達成し、1978-1979シーズンのUEFAチャンピオンズ・カップでは準優勝に輝く。
一方のホジソンは1976年にハルムスタッドBKの指揮官としてチームをリーグ優勝に導いた。
両者がそれぞれのチームに持ち込んだのは、それまでスウェーデンで主流だったリベロを置いた3バックシステムのマンツーマンディフェンスとは異なる、4-4-2をベースとしたゾーンディフェンスだった。この4-4-2システムは紆余曲折を経てスウェーデンサッカーで主流となっていく。