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日本代表 9年前

ハッキリしない「決定力不足」の定義。日本サッカーが解くべき命題とは?

7月6日発売の『フットボール批評issue06』(カンゼン)では、「決定力不足の正体」と題した特集において、頻繁に使用されるものの、その実、曖昧に定義されている「決定力」について徹底検証している。一部を抜粋して紹介する。

text by 清水英斗 photo by Getty Images

「決定力」と「得点力」をどう区別するか?

ハッキリしない「決定力不足」の定義。日本サッカーが解くべき命題とは?
日本代表はシンガポール戦を相手にゴールを奪えなかった【写真:Getty Images】

『決定力不足』という日本独自のサッカー用語は、一般への浸透度とは裏腹に、そもそもの定義がハッキリしない。決定力とは、どんな能力なのか?

 チャンスを決める力だとすれば、『得点力』とは何が違うのか?

 その目的語は、試合だろう。

 ならば、“試合を決定付ける力”。それを決定力と考えるのが自然だ。

 たとえば、その試合の当該時点における決勝ゴール、あるいは同点ゴール。試合の結果(勝ち点)をひっくり返すようなゴールを挙げ、こう着をぶち破る力。それを決定力とし、逆に2-0を3-0に広げるような追加点、あるいは3-0から3-1に縮めるような追撃点は、決定力とは考えない。筆者はそのように定義する。

 なぜか。

 野球のピッチングに例えるなら、いくらかの点差があってソロホームランまではOKとするストライク先行の配球と、1点も与えられない僅差の中で投げる配球は、組み立ても守備のシフトも大きく異なる。バッター側としても、前者の状況でホームランを打つことと、後者の状況でホームランを打つことは、難易度が異なる。後者のほうが甘い球は少ないからだ。

 サッカーの戦術的に言うなら、ビハインドを追う相手がリスクを負って攻め込んできたとき、その空けたスペースをカウンターで突く追加点は、試合の流れを巧みに利用したゴールだが、しかし、相手も「取られても仕方がない」と開き直っているので、このようなゴールは、こう着した状況を打開したとは言わない。

 相手がその1ゴールを最大限に警戒し、「入れさせない!」とする状況に対して、こう着をぶち破ること。その緊迫した状況で試合をひっくり返してこそ、決定力である。そう明示的に定義をするなら、この造語にも価値があるのではないか。

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