浦和を変えた絶体絶命の場面で発揮される強靭なメンタル
初ゴールを決めたマリノス戦後のヒーローインタビューでは、埼玉スタジアムを赤く染めたファンやサポーターの前でこう絶叫している。
「じゃないほうの武藤がやりました!」
謙遜しているだけではない。笑顔で自虐ギャグを受け入れた武藤は新天地での充実感に浸りながら、自分自身が描いていく成長曲線に確かなる手応えを感じていた。いつかは「じゃないほう」という枕詞が必要なくなると信じて――。
「ベガルタでも2位になったことがありますけど、その経験からも優勝してなんぼというか、2位では意味がないことを知らされた。その意味では絶対に優勝したい。タイトルの取れるチームにいて、タイトルの取れる順位に立っているので、しっかりと勝ち切って取りたい」
過去未勝利とこれも鬼門だったサガン鳥栖のホーム、ベストアメニティスタジアムで5月30日に行われた一戦で同点ゴールを決め、6対1の逆転勝利に導いたのも武藤だった。
雑草という言葉を用いるのは失礼かもしれないが、踏まれても、叩かれてもたくましく、真っすぐに伸びていく強さを武藤は身にまとっている。6ゴールのうち実に4つが同点ゴール。絶体絶命の場面で発揮される強靭なメンタル力が、2シーズン連続で後半戦に大失速し、優勝を逃してきたレッズを明らかに変えている。
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