移籍を決意させたミシャの言葉
心のなかに巣食う迷いを断固たる決意に変えてくれたのが、レッズを率いるミハイロ・ペドロヴィッチ監督からかけられた言葉だった。体調の問題もあって仙台市内で行われた初交渉に出馬できなかったペドロヴィッチ監督は、2度目の交渉を都内で設けたいと要望してきた。
時期は11月下旬。ガンバ大阪との優勝争いの真っただ中にいた指揮官は、武藤を笑顔で迎えながら開口一番、こう叫んだという。
「おお、マラドーナ!」
交渉の席で、ペドロヴィッチ監督は武藤のスピード豊かなドリブルや、ヒールパスやワンタッチパス、フリックパスに代表される意外性に富んだプレーを、往年のスーパースターの名前を例にしながら高く評価した。
この瞬間、武藤の心は決まった。問い合わせを含めれば6チームを数えた選択肢のなかから、レッズを選んだ理由を武藤はこう明かす。
「自分自身に期待したというか。レッズのなかで頑張って大きく成長する、という強い覚悟を抱きました。J1で常に首位を争えるような、日本のトップクラブでプレーできる機会はなかなか訪れない。
ダメなら落ちていくとも覚悟していたなかで、開幕前のキャンプからしっかりと自分自身を表現できたことがいまにつながっていると思っています。いま現在の結果にはもちろん満足していないし、まだまだ成長できるとも思っているので、もっともっと上を見つめていきたい」