ゲームでも失点を抑えたい!
もともと『サカつくシリーズ』のユーザーだという楢崎選手に「仕事を離れて理想のチームをつくるとしたら」と質問すると「楽しいサッカーをやりたい」という答えが返ってきた。
「現実に監督の視点で取り組むとなれば、まずは守備を整理しないとチームが成り立たないけど……ゲームでやるならとことん攻めたいです(笑)。能力の高い選手を集めて、前がかりに攻撃的にいきたいですね。キーパーの能力が高いなら、サイドバックを積極的にどんどん上げていきます」
ただ、楢崎選手はこうも続ける。
「ただし、攻めていてもね。ちゃんと戻れよ、と選手たちには言いたい(笑)。やっぱり最少失点で抑えたいんですよね」
遊びであっても失点は減らしたい。それは楢崎選手のゴールキーパーとしての責任感のあらわれなのだろう。
こだわるのは危険な1対1を防ぐ「神セーブ」ではなく「地味な組織守備」だ。ゴールキーパーがシュートを止める必要がなく、守備の組織で未然にシュートを防ぐことができたとき、楢崎選手は心のなかでガッツポーズを決めると語った。
「はためにはちょっとわかりにくいかもしれませんが、簡単にシュートを防いだように見える場面でも、じつは難しい状況だったりする。そんな場面を自分たちのイメージどおりに処理できると、キーパーとして喜びを感じます」
数々のピンチのシーンを堅実なプレーで救ってきた楢崎選手。そのゴールキーパー論には圧倒的な深みがあった。
「いま世界で話題のゴールキーパーと言えば、ノイアーと言えるでしょうが、彼は素晴らしいゴールキーパーです。でも、実際にはチームのやり方によってゴールキーパーとディフェンスラインとの関係性は異なるものなんですよね」
ゴールを離れてスイーパー的な役割を果たす派手な姿も現代ゴールキーパーの見どころではある。しかし、ゴールキーパーがどうプレーすべきかは、最終的には、やはりチーム戦術、そしてディフェンスラインとの兼ね合いによって決まる部分が大きいのだ。
現在の楢崎選手は、世代交替が進む名古屋において、ディフェンスラインに入ってきた若い選手たちを鍛える立場でもある。
「いまの若い選手たちは、いろいろな個性があって身体能力が高く、経験を積むともっと伸びるだろうという感触があります。本当に今後が楽しみですね。成長するためにも、ミスをおそれることなくとにかくやってほしい。自分も横浜フリューゲルスでデビューした若い頃は、周囲の先輩方にたくさん助けてもらっていましたから(笑)」