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日本代表 9年前

ハリルが陥った誤算とは? “悲観論”では終われないシンガポール戦

text by 河治良幸 photo by Getty Images

今回の結果を失望ではなく高みを目指す糧に

 もちろんそうした崩しを意識するならば、メンバー選考から適任者を選ぶプランもあるだろう。すなわち遠藤保仁や中村憲剛といったプレーメーカーの組み込みだ。彼らはハードワークや素早い攻守の切り替わりをベースにしたスタイルに向いているとは言いがたいが、守備を固めた相手に対しても強引さではなく工夫で崩すビジョンを持った選手たちだ。

 最初のメンバー選考時にハリルホジッチ監督は遠藤を選ばなかったことについて、若手を優先的に選出したことを前置きした上で、「ものすごく大事な試合で遠藤が必要なときがあれば、遠藤を呼ぶということも考えている」と説明を加えている。

 年齢のことあるが、どちらかと言えば自分の方向性を植え付けるにあたり、スタイルの確立された選手を軸に置くデメリットを考えたのではないかとも筆者は見ている。

 ハリルホジッチ監督が今後もロシアW杯の本大会から逆算した強化を継続することはブレないはずだが、アジアの二次予選や最終予選を戦い抜き、かつ様々な相手に対応できる戦い方のバリエーションを増やすために、それに適したキャラクターの選手を加えるということは間違いではないだろう。

 現在のメンバーでは柴崎岳が攻撃に変化を与えられる希少な存在だが、縦に速いサッカーを身に付けようとする中で判断が狭まっている様にも見える。攻守の切り替わりが多いイラク戦の様な試合ではそれがはまったが、シンガポール戦ではプレーの使い分けの必要性が課題となって表れたとも言える。

 アジア予選が簡単でないことは戦前から分かっていたことだが、普段からサッカーを熱心に見ているファンでさえ、ホームのシンガポール戦で引き分けると予想した人は少なかったはずで、現在は日本中のサポーターが少なからず失望していることだろう。だが、そこで見えてきた問題をどう生かすかで、ここから先は大きく変わってくる。

 シンガポール戦のスコアレスドローがアジア予選というものに向き合うきっかけになることは間違いないが、それが世界の高みを目指す上でのセットバックではなく、引き出しを増やすための糧になっていくことを期待している。

【了】

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