シンガポール戦の結果の悲観視は危険な兆候
シンガポール戦で23本のシュートを記録しながら1点も取れずに引き分けたことで予選の厳しさを味わったわけだが、今回の結果をもってハリルホジッチ監督が目指すサッカーを悲観する意見も出てくるのは危険な兆候だ。
攻守の切り替えやボールに対する厳しさ、縦にボールを付けていく意識というのは確実に上向いているし、攻撃しながら守備を安定させる部分も過去の代表よりレベルアップしている。それでも試合後に大きなブーイングが出る様な内容と結果になってしまったのは、引いた相手を崩すアプローチが不足していたことが大きい。
これまでの3つの親善試合はチュニジア、ウズベキスタン、イラクといったシンガポールより1枚も2枚もランクが上で、中盤のインテンシティーも高い。しかし、そういう相手の方が日本に対しても点を取りにきてくれるし、リスクもかけてくれる。親善試合ということもあるが、攻守の切り替わりから速い攻撃を生かしやすい状況にあったわけだ。
しかし、シンガポールはシュタンゲ監督が認める様にとにかく失点しないためのサッカーに終始し、カウンターもはまればラッキーで、得点チャンスといより日本の攻勢を削いで自分たちの守備の呼吸を整える効果を期待していた部分も大きかったはず。
そうした相手に対して前半は中央からサイドから、縦にボールを入れながら練習でやっていたクサビからワンツーで出て行く仕掛けを繰り返し、前半30分に岡崎慎司がフリーでシュートに持ち込んだ場面の様にはまった時もあったが、多くはDFラインのところでボールを引っ掛けられるか、進出を阻まれてしまった。
後半は中央で起点を作ってからサイドに展開し、クロスを入れるという形でチャンスそのものは増えたが、相手のディフェンスがよりゴール前を固める状況を作ってしまい、大迫勇也、原口元気、武藤嘉紀と攻撃的な選手を増やしたものの、中盤からの引き出しが無くなり、最後はサイド攻撃すら機能しなくなった。