シンガポールの組織守備を前に無得点
実力差は双方の監督が認めている。日本が勝てなかったのは不運、相手GKのファインプレー、決定力不足、心理的な焦りなど、いくつかの要因があげられる。
最も大きいのはシンガポールの守備組織の良さである。
シンガポールは中盤を日本に明け渡して引いて守り、日本のボランチが前に出てきても釣り出されなかった。ある意味、この作戦が勝ち点1をもたらしたといっていい。
決して釣り出されず中央を固め、日本の中央突破を密集で阻止した。日本は当然サイドへボールを回すが、そこは必ず2人以上が対応して突破を諦めさせる。すでに十分後退しているので日本がドリブルで仕掛けられるスペースはさほど大きくない。
この統制のとれたシンガポールの守備組織に対して、日本はいくつか方法で打開を試みているが、ハリルホジッチ監督がメインにしたかったのは次のようなアプローチである。
サイドを起点にしても対応されるので、日本の攻撃はやり直しになる。サポートについた長谷部や柴崎にいったんボールを下げる。そのとき、シンガポールはディフェンスラインをペナルティーエリア外まで上げる微修正をする。そこで、対角の逆サイドに大きくボールを振って一気に裏へ入るか、相手がスライドを完了する前に逆サイドから攻め込んでとどめを刺す。CL決勝におけるバルセロナの先制点がまさにこのアプローチだったのは記憶に新しい。
だが、そんな崩し方は少なかった。忘れてしまったのか、技術的に困難なのか、いずれにしても実行しないのでは絵に描いた餅である。多くはサイドで行き詰まるか、中央の狭いところへ入り込んでミスをするか。もちろん、いくつかは決定機につながっているが、成功率の高い攻撃は宇佐美のカットインと本田がクサビに入る形ぐらいで、用意した攻撃パターンは何度も再現できるものではなかったようだ。
シンガポールの守備は良かった。しかし、それは日本が想定していた壁だった。その壁を越えられなかったのはただ日本の力量不足である。